marke Trans

marke Trans

【実績紹介】広告・エージェントを使わずにCVを獲得し続ける採用サイトのウェブ戦略・運用方法

【実績紹介】 2023.09.19

採用サイトの問い合わせがゼロ。ウェブ広告を打ち閲覧数を増やしてもCVが得られず、求人媒体に出稿するもマッチングがうまく機能せず、採用できない負のループ……。そんな状況の方へ、弊社の成功事例とともに押さえるポイントをお伝えします。

※markeTransは「ウェブサイトで成果が得られない」「ブランド戦略をどのように立てればよいかわからない」企業様を支援します。お気軽にご相談ください。

目次

“I(アイ:私)視点のウェブサイトは失敗する

自分の都合ばかり語る営業マンは成功しません。対面ならばテクニックで挽回できるかもしれませんが、 ウェブサイトはセルフサービスです。ユーザーが少しでも「面倒くさい」「ここに欲しい情報はない」と感じたら一瞬で離脱されてしまいます。

今回、ご紹介する事例は救命救急センターの採用サイト。開設後数年運用したものの応募は0件。採用エージェントを利用してもマッチングがうまくいかず短期間で辞めてしまうという状況を変えるべく、採用サイトのリニューアルをご相談いただきました。

<依頼主:埼玉医科大学総合医療センター高度救命救急センター>

https://saitama-qq.jp/

  • 国内屈指の救命救急医療センター
  • 救命医を目指す医学生・研修医を集めたい
  • 採用サイトを公開するも、数年間応募ゼロ

この事例で使った戦略設計は、採用以外の分野でも使える基本的なものです。記事では戦略を実践した結果をご紹介しますが、具体的な実践方法はnoteでまとめています。ぜひ、ご自身のウェブサイト改善でご活用ください。

【現状分析‐1】現状と理想を「As is / To be分析」で言語化

成果を得るためには現状と理想(ゴール)を明確にしなくては戦略がブレてしまいます。まず改善すべき点を現状分析で洗い出し、成果を得るための道筋を作りました。

現状を伺ったところ、「自社採用サイトから問い合わせが来ない」点が目下の課題で、理想としては求人サイトを介さずに(※求人サイトを介して来た方はこちらの希望とマッチせず、コストだけかかっていた)、自社で採用獲得したいとのこと。この前提をもとに現状分析をしました。

ウェブサイトを見た限り、自分視点の発信により人手不足感や大変そうな印象を与えてしまっているのではないかというのが所感でした。

課題と改善策をまとめるとこのようになります。

課題1:主語が一人称でわかりづらい

  • 「専門医を求めています」「◯◯な人募集中!」など、主語が“私”になっている
  • 専門用語、内輪向けの造語を使っている

埼玉県内の観光スポットの画像や、マイナー科(他の医療機関で扱うことが少ない分野)の知識・経験が豊富な点の訴求は対象のユーザーが本当に求めているのか、ユーザー分析をせず訴求している印象がありました。

改善策:主語を「YOU」にする

  • 「あなたはここで◯◯できる」「あなたがここで働くメリットは◯◯」など、相手の立場で語る

ユーザーの行動喚起のためには、まず相手の目線に立ち、その人が欲しい情報、共感する訴求を検討すべきと考えられます。顧客分析と訴求の見直しをご提案しました。

課題2:ページが分散してわかりづらい

  • ページが多いのにサイトマップがないなど、迷いやすい構造

HTMLとCSSのみで制作されており、ページを追加するたびに導線が複雑になっていた様子が見受けられました。

改善策:導線を明確にする

  • ユーザーが見たいページへの導線をトップページに集約
  • ページ構成を簡素化

CMSを取り入れ運用を簡略化し、トップページでコンテンツ全体を俯瞰、遷移できる構成をご提案しました。

課題3:伝えたいことだけを伝えている

  • ユーザーが知りたいことを網羅していない(募集要項、連絡先、SNS、所在地、アクセス、問い合わせ方法がわかりづらい)

施設のビジョン、思いを伝えることに重きを置きすぎてしまい、基本情報や問い合わせ先などがわかりづらい構成になっていました。

改善策:提供するベネフィットを明確にする

  • ユーザー課題を意識したベネフィットを明確に提示

対象のユーザーが本当に求めていることを分析した上で提示することをご提案しました。

課題4:テキストが多い

  • 文章量、段落ごとの間がなく読みづらい
  • PC、スマホそれぞれに最適化されていない

テキストが長くなるほど読了率は下がります。さらにスマートフォンで閲覧した場合、画面いっぱいに文字が広がる状況でした。

改善策:飽きずに読ませる工夫をする

  • インフォグラフィックなど、スマホに慣れたZ世代に刺さる見せ方をする
  • ひと目でわかるデザインで読了率を上げる

ユーザーの判断は数秒です。ファーストビューで価値をしっかり訴求し、最後まで読んでもらうデザイン的な改善も合わせて検討しました。

【現状分析‐2】「AB3C分析」で戦略の全体像を掴む

次に、「誰に」「何を伝えて」「どんな成果」を得るのか戦略の精度を高めるべく「AB3C分析」を使いました。3C分析(Costomer:顧客、Competitor:競合、Company:自社)に提供価値(Benefit)と差別的優位点(Advantage)を足したフレームワークで、戦略の全体像を掴みたいときに役立ちます。

ターゲットが誰でゴールがどこか分からなければ道筋が定まりません。これからお伝えする戦略設計の全体像をまとめるとこのような図になります。

①すべてのマーケティングは「顧客」から始まる

AB3C分析は「顧客分析」から行います。なぜなら、競合・自社の分析内容は顧客分析の内容により相対的に変化するからです。

今回、20代後半から30代の研修医・若手医師を採用したいとのことで、ターゲット像をさらに深掘りする定性データの収集を行いました。

ユーザーインタビュー

ターゲットの属性に近い人物へインタビューを行います。今回は属性の近い知人にお願いしました。依頼元の団体と関係がない第三者で、ターゲットの年齢、属性が近い人物にお願いしています。

インタビューでは以下のニーズが見つかりました。

  • 医学生が一番重要視するのは「症例数」
  • 研修医から実際に手を動かして経験を積める場所がいい
  • 後輩を育てる上級医の存在は欲しい
  • 職場の雰囲気は大事(気持ちよく働きたい)

<ユーザーインタビューのポイント>

  • インタビューは2人~5人
  • ターゲット属性(年齢、職業など)が近い人を選ぶ
  • 第三者に依頼する(お客様に直接聞くケースもあり)

ソーシャルリスニング

SNSや知恵袋などの掲示板でターゲットに近い人物の投稿を分析します。今回はX(旧Twitter)の投稿を分析できるYahoo!リアルタイム分析で「研修医」のキーワードで分析し、以下の傾向が見られました。

  • 現場の雰囲気(上下関係、パワハラの有無)は大事
  • いざ医師免許が取れたら、この先どうしたらいいか悩む医師もいる
  • 専門医になるためには症例数をこなし上級医の指導が欲しい

<ソーシャルリスニングのポイント>

  • Yahoo!リアルタイム検索、Yahoo!知恵袋などユーザーの悩みが投稿されるツールで調べる。
  • 関連が高いキーワードで検索する(今回は「研修医」)

②ペルソナで顧客像を言語化する

集めた情報でペルソナを作ります。顧客像を明確に設定することで戦略がブレなくなります。集めた情報を分析した結果、以下のターゲット像になりました。

 

一番のニーズは症例に触れる機会の多さと言えます。専門医の資格取得には多くの症例数が必要だという点がユーザーインタビュー、ソーシャルリスニングどちらでも見受けられた点です。

加えて職場の雰囲気が良いことも大きなニーズとして挙げられます。

また心理的ハードルに、「経験がない状態で自分はやっていけるのか」という点が挙げられます。救急はジェネラリストが求められる現場です。広い知識と経験が求められる現場で器用貧乏になってしまわないか、そもそも能力が通用するのかが懸念されやすいポイントと考えられました。

ペルソナ設定のポイント

  • 想像の産物にしない(データをもとにつくる)
  • 母集団の代表になる人物像にする

③「競合」はニーズで探る

依頼主の高度救命救急センターは救急指定病院のなかでも特に高度な診療機関です。救急を扱う指定病院は患者の重症度によって3段階の体制を取っており、なかでも高度救命救急センターは、1次、2次で対応できない外傷、疾患を治療します。

一方、医学生が研修先を探す際は救命救急以外の分野も対象に含むと考えられます。

そこで、産婦人科から2次救急病院までさまざまな「病院」を分析し、ターゲットユーザーを見据えて対象を絞りました。

分析の結果、「専門性が高く豊富な経験を積むことができる」というニーズに沿って、採用活動が積極的な大学病院を競合としました。

競合が決まったところで、各ウェブサイトの分析をしました。

実際のところ、研修制度がしっかり組まれている点を謳う大学病院が多く見られます。

これをもとに、自社分析で差別化のポイントを探りました。

④「自社の強み」は相対的に変わるもの

今回のご依頼では、依頼主が「強みになり得ない」と思っていたことの多くがものすごい強みでした。

  • 症例数が多い 
  • 脊椎・頚椎損傷の手術症例全国1位 
  • 重症患者の院内死亡率が20%以下(全国平均は50%強)
  • 外傷診療に特化している
  • ドクターヘリがある

競合は研修制度をしっかり整備するところが多く見られる点について依頼元の先生方へ伺ったところ、「研修制度が無いところが当センターの弱みだ」と仰っていました。

また、他の救命救急医療センターと比べると知名度が低い点を気にされていた印象もありました。ドラマのロケ地になった施設と認知度・人気度で比較し、他の部分で優位に立てる強みが認識されていませんでした。

研修制度がないということは、研修医で臨床に立てるという意味では大きなアドバンテージと言えます。かつ、救急以外の診療科に話を聞きやすい点も、研修制度がないからこそ実現できる強みです。

このように一見弱みにみえることも、見方を変えると強みになり得ます。

先に作ったペルソナのニーズと上記の強みを照らし合わせると、専門に特化し、症例数も多く、優秀な指導者もいるといった点でニーズを満たしています。

また、「救命の先へ(手術後も外科で担当医が診療し、社会復帰後のフォローを行う)」というビジョン、学閥が無く若手の育成に積極的な姿勢も非常に特徴的かつターゲットのニーズを満たすものでした。

「うちには強みがない……」と思う方もいらっしゃるかもしれません。ですがほとんどの場合、組織内で当たり前になっていて気づいていないだけです。

そして、強みは相対的なもの。ユーザーが求めているもの、競合が提供できていないものは強みになりうると言えます。

強みは顧客と競合次第で変わるのです。

⑤3CをもとにWhat to Say(伝えたい価値)とRTB(Reason To Believe)を明確化

これまでの分析で明らかになった強みを機能的価値と情緒的価値に分類し、その根拠になる(価値を保証する点)を、RTB(Reason To Believe:根拠となる強み)にまとめました。

RTBはそれぞれの価値を保証する情報、根拠です。

  • 短期間で沢山の臨床経験を積むことができる
  • 専門科の枠を越えたチーム医療を実現している

これらは機能的価値「実務経験を多く積むことができる」と表現しました。

  • 救命で救ったあとの患者さんと直接話すことができる
  • 退院後の人生まで考える組織ビジョンから、人を救う喜びを感じることが出来る。

これらを情緒的価値「医師としての価値観を築く原体験の提供」と表現しました。

情緒的価値「医者として多くの患者を救い、治療したあとの人生まで見据える価値観を原体験として持てる」は、おそらくターゲットが自覚していない核心を狙って設定しました。

「医師免許取得を目標に頑張ってきたが、いざ免許を取ったら医者としてどうしていいかわからない」というソーシャルリスニングをもとに、研修期間中に医師としてのあり方も身につけたいと考えているのではと仮説を立てています。これは、現段階では競合が訴求しておらず、自らの強みを活かせる勝ち筋です。

次に、3Cのバリュープロポジション(ベン図が重なった部分)で顧客ニーズ、自社の強み、競合に勝てる部分を俯瞰し、USPとUVPをまとめました。

USP(Unique Selling Proposition:自社独自の売り・強み)は、初療から退院後の外来フォローまで一貫して診療に携われること。

UVP(Unique Value Proposition:自社独自の提供価値)は、多発外傷といった重症患者の治療を行い、瀕死状態の患者が社会生活に戻る過程をともにできる+価値観を醸成する原体験ができる点(救命だけが救命センターの使命ではない)と、まとめました。

 

USP・UVPは戦略の「勝ち筋」です。この市場で勝てる切り口を言語化しておくことで、その後のPR、ブランディングをブレずに進めることができます。 

これで戦略に必要な情報が整いました。

現状(スタート)と理想像(ゴール)を決め、顧客・競合・自社の関係を枠組みに当てはめてみると、具体的に何をすべきかが見えてきます。

この事例で使った戦略設計は、採用以外の分野でも使える基本的なものです。具体的な実践方法はnoteでまとめています。ぜひ、ご自身のウェブサイト改善でもご活用ください。

【戦略設計】ブランディング・UIUX・運用方法を組み立てる

ここまでの調査・分析をまとめた上で、ブランドイメージを「国内随一の外傷センター」と言い切り、高度救命救急センターよりも対象を絞って軸に据えました。

①ブランドイメージ定着のロードマップでブランド戦略を俯瞰

ブランドエクイティピラミッドは、ユーザーにブランドイメージが定着するまでの流れを下から上に向かってまとめたもの。これまでの分析をもとに、「国内随一の外傷センター」のブランドイメージを目指す形をご提案しました。

図の右側は、顧客・競合分析で明らかになった、POP(Point of Parity:同質点、満たすべき最低条件)、POD(Point of Difference:差別点、自社が選ばれる理由)、心理的ハードルを列挙し、それらに対しこちらが提示できる答え(強みを生かしたハードルへの回答)をまとめました。

ここでは依頼主と認識の齟齬がないよう、これまでの分析を俯瞰するためにまとめています。

②サイトの導線設計とマイクロコンバージョン設定でCV率UP

先に挙げた課題「ページが分散して分かりづらい」を意識しつつ、ターゲットが求める情報を構造化しました。改善のポイントは、コンバージョンのハードルを下げたこと(=マイクロコンバージョン)です

リニューアル前のコンバージョンは「施設見学の申込」のみでした。ただ、ウェブサイトからすぐ申し込むのは心理的ハードルが高く、かつ遠方にお住まいの場合は申し込みに移動や宿泊先など負担が大きくなります。

そこで新たに「カジュアル面談」を取り入れていただきました。

カジュアル面談はオンラインで施設の現役医師と面談できる機会です。金銭的なコストをかけずすぐ始められる点において、採用を強化したい企業にとってはプラスになる施策と言えます。

運用負担は増えますが、申込みフォームに希望日時の項目を設けたこと、意欲的な学生の申込みが増えたことで、依頼主にもご理解をいただくことができました。

③ターゲットに使ってもらえるデザイン・UXを実現する

今回の対象は25才以降のミレニアル世代。デジタルネイティブかつスマホでウェブサイトを閲覧すると考えられます。そこで、最新のウェブデザインの傾向を捉え、流行りの流体シェイプやアイソメトリクスを取り入れつつ読みやすさを重視しました。

また、スマホでの長文コンテンツは読了率が下がります。目線の横移動だけで読んでもらえる文章量(スマホの左から右端まで)を意識しました。

さらにこだわったのはメニューボタンの位置です。片手でスマホを持ったときに選びやすいようグローバルナビゲーションは画面下に固定。ハンバーガーメニューを右端に置いています。

④SNSをブランド想起と共感に使う

ウェブサイトは存在を認知してもらうきっかけが必要です。どうやってそのウェブサイトに訪れてもらうのか、今回は認知創出とブランドイメージ想起にSNS活用をご提案しました。

職場の雰囲気は入社してみなければわからないもの。ですが、ターゲットが重要視する項目です。

そこで、ドクターヘリ出動回数、救急搬送の数、職場(医局やオペ室)の様子など、院内の日常が身近に感じられるツールとして、Xの利用をおすすめしました。

依頼主のターゲット属性とXのメインアクティブユーザー層が被る、Xはライトなコミュニケーションが主体になるため未経験でも始めやすい、競合が活用しきれていないなどが理由です。

※ちなみにInstagramアカウントも存在しましたが、休止してXだけの運用に切り替えました。Instagramはクリエイティブ作成に経験が必要かつ、Xよりも大きな労力を要します。イメージ訴求よりも即時・刹那的なXによる拡散(知名度向上)を狙っています。

認知獲得は検索まで波及する

SNSで認知してもらい、採用サイトで検討してもらう流れを考えたときに、「ブランドカテゴライゼーション」という枠組みを使いました。これは「◯◯といえば」で一番に想起してもらうための戦略を考えるときに使います。

ある商品カテゴリーにおける思い出しやすさは、知名集合、処理集合、想起集合、第一想起の順でトーナメントのように決まっていきます。

ここでは詳細を省きますが、今回の事例では「想起集合」を目指して、SNSで認知を広げ、ウェブサイトで検討・行動(問い合わせ)までを以下のように構成しました。

認知が広がると検索エンジンを使った指名検索(施設名など固有名詞の検索)が増えます。ご依頼の施設は、ウェブ以外の認知獲得方法に学会やメディア露出があり、そこでも採用サイトの訴求を行っていただきました。

学会の登壇情報や、メディア掲載についてはHP上で「お知らせ」として投稿。そのリンクをXで拡散することで、実績の認知とウェブサイトへの外部動線を確立しています。

臨床だけでなく研究もしているというブランドイメージを強固なものにすると同時に、ウェブサイトへのリピート訪問を増やすことで単純接触効果も期待できます。

結果、ウェブサイトへの流入でX経由の流入が1番多くなりました。これは一時的に見られ、その後指名検索が増えたことで自然検索による流入が増え、セッション数は運用前の2倍になりました。

【運用】現場連携と細かなチューニングが成果への近道

戦略設計・サイトリニューアルを終えたあとが本番です。成果を掴めるかどうかは運用の仕組みとチーム連携次第と言えます。

今回はウェブサイトを基幹に据え、SNS、リアルイベントでのPRから必ずウェブサイトに訪れるよう徹底しました。加えて、運用に関わる負担を少しでも軽く、かつ運用への関心を高めていただく工夫を取り入れています。

成果を出すには、運用する方々(依頼主)の協力が必要不可欠です。

具体的には以下の工夫を取り入れました。

ウェブサイトに情報を集約。SNSで訪問のきっかけを増やす

リニューアル前の流入元は指名検索による流入、またはノーリファラーで、おそらく施設をもともと知っている方だと考えられました。そこで、新規かつ見込みユーザーを増やすためFacebook、Xの告知にウェブサイトの詳細URLを掲載。リンク先で詳細がわかるよう形を整えました。

SNS運用はフォロワー数増へ注力されがちですが、このプロジェクトにおけるコンバージョンポイントはあくまでウェブサイトにあります。SNSはウェブサイトへ導くきっかけ(タッチポイント・中継地)のひとつ。できるだけ多くのユーザーをウェブサイトへつなげるために取り入れています。

詳しくは後述しますが、医学生・研修生向けのイベント情報に加え、1ヶ月ごとの施設稼働データ、現場で働く医師のインタビューコンテンツなど、ユーザーの関心が高いコンテンツをリニューアル後に増やしました。

結果、SNSによる流入数が増加し、指名検索による検索流入も増加しました。

初めてのX(旧Twitter)運用。告知ポスターと相談窓口の設置

ご依頼前はFacebookとInstagramを運用していました。ただ、画像を含むコンテンツづくりの負荷が高いこと、各SNSのユーザー層を鑑みてXアカウントに切り替えました。現在、Facebookは先生方の余裕があれば更新していただき、Instagramはアカウントを休止。Xに注力する運用に切り替えています。

Xでは、中心となる担当者2名と一緒にX運用の周知を徹底しながら、markeTransへの相談窓口を設けました。

初めは日別で担当を決め、1日5から10投稿を目標に始めました。しかし、担当者の負担が大きく思うように進まなかったため、投稿内容ごとに担当を決めて一人あたりの投稿数を減らすよう調整して現在に至ります。この体制で、担当者ごとに投稿する内容が決まっているので、ネタに悩まず投稿を習慣化できるようになりました。

運用周知用のポスターには、QRコードでアクセスできるチャット相談窓口を設置しました。初めはほとんど相談がなかったものの、先生方が運用に慣れていくほど増えていきました。

主な相談内容は、投稿しても問題ない内容か、画像の権利関係を確認したい、リプライへの返答です。一時、アカウントに対する批判的なコメントが数件寄せられたことがありました。そんなときに先生方のメンタル面をフォローし、適切な対応を取ることができたのも窓口を作っておいてよかったなと感じるところです。

また、こちらからSNSで取り上げたいテーマ(今日はなんの日?、X上で話題になっていること)などのご提案を続け、適宜コンテンツを一緒に作っています。

例えば、「救急医はプライベートがないのでは?」というイメージに対するアンサーとして、先生方のプライベートでの過ごし方を画像で投稿していただきました。

また、救急の日(9月9日)は高度救急救命センターという特色を活かして注目されやすいタイミング。逃す手はありません。関連するコンテンツを作成し、PRに活かしていただきました。

より運用がスムーズになる工夫として、投稿する人とやるべきことは明確に伝えるよう心がけています。

アシスタントの方には「今日のランチ」を。先生方にはそれぞれ「クイズ」「今日の院内の様子」など、ネタ見本になるように、スマホの画面サイズで画像を作成し、先生方のグループLINEでアルバムを作って保存してもらいました。

かつ、毎月、定例で打ち合わせを行い、前月の投稿で反応が良かった投稿や成果につながった投稿を共有。なぜ成果が出たのかを考察しています。成果のあった投稿はテンプレート化した上で継続的に投稿いただきつつ、翌月さらにチャレンジする方向性や、修正を加える点などを話し合っています。

救急医療に携わる医師のみなさんは、もともと分析と実践が得意な方々。成果が出た点、改善点の分析と実行力が高く、定例会はいつも盛り上がります。

気をつけなければいけない点として、人は叱責されるとモチベーションが下がってしまうもの。良かった点、伸ばしたい部分、なぜ効果が高かったのかを前向きにお伝えするようにしています。

これらの結果、運用を本格的に始めて今日まで、フォロワー数は増え続けています。今も毎月60~100ユーザーくらいの幅でフォロワーが増えており、Xがきっかけで外部メディアに取り上げられるなどの効果も得られています。

加えて、投稿あたりのエンゲージメント率(いいね、リツイート、リプライの数)も高まっています。先生方が運用に慣れてきたことで、創発的な投稿が見られるようになりました。先生方も前向きに自ら工夫し、エンゲージメントを狙った投稿をされている様子が日々うかがえます。

これこそ、弊社が掲げるMission「マーケティング思考をインストールする」の体現に向けた変化です。

運用が大変なものは辞める決断を

Xを運用するなかで、マシュマロを取り入れた時期がありました。

マシュマロは匿名で質問やメッセージを受け取れるサービス。これにより、「先生にプライベートはあるの?」「休みはあるんですか?」など、有益な質問を得られました。想定よりも多くのエンゲージメントもありました。

ただ、想定より多くの質問が寄せられたことで、先生方が通知に耐えきれなくなり辞めることに。リソース的に厳しいと判断をしました。

無理のない範囲で試しながら、より良い運用を模索した1年でした。

コンバージョンレートを上げるチューニング+コンテンツの追加

ウェブサイトへの流入数だけ増やしても意味がありません。コンバージョン率を確認しつつ、コンバージョンにつながるページの訪問数、PV数、集客数の傾向もチェックしながら効果測定を行いました。これらの傾向は毎月の定例会に加え、4半期ごとに全体の傾向を別途共有しています。

ただ数値の動きを共有するだけではありません。翌月の定例会までにできること(追加するコンテンツ、サイトの修正)などを話し合い、タスクと役割分担を決め、スムーズに進行するための仕組みを私が用意し、先生方と連携しています。お忙しいなかでスピード感をもって施策を実行に移していただく工夫は、改善点の分析と担当者の割り振り、仕組みづくりが肝になります

まず改善点の分析です。コンバージョン率は訪問からフォーム到達までに閲覧したページを含めて、それぞれどれくらいの数で推移しているかを見ます。これにより、どのプロセスを改善すべきかわかります。

リニューアル当初、セッション数の多くは新規訪問でした。新規訪問からすぐコンバージョンすることはユーザー視点で考えると難しいと思われます。リピーターを増やすために必要なことは「ページの更新性」。新しいコンテンツを作り、再訪問を促す必要がありました。

そこで、現場で働く方の夢や、センターの魅力を語るインタビューコンテンツを追加しました。

ページ自体は制作コストを抑えるため1ページにまとめました。ただ、一人ひとりにアンカーリンク(ページ内の個別リンク)をつけて、SNSで一人ずつ紹介していただきました。

SNSの投稿数を増やすことができ、サイトの更新性も得られ、ユーザーの検討材料としても有益なコンテンツと言えます。

このページはかなり好評で、一時的にサイト内で一番の閲覧数を得たときもありました。

さらに更新性を上げるため、毎月の診療実績を資料として掲載いただくようにしました。

加えて、依頼主が主催する若手研修医、医学生向けの勉強会YTTの存在を知り、こちらもコンテンツ化させていただくようお願いしました。

ユーザーが知りたい研修医のフォロー体制が分かるイベントであり、間違いなく強みになるコンテンツだとお伝えし、開催レポートをアーカイブして毎月記事をアップしています。

この記事を公開し始めてから、外部からYTT参加希望のお問い合わせをいただくようになりました。

指名検索を増やしながら「外傷センター」のKWでSEO対策

リニューアル以降の運用が功を奏し、施設名検索による流入が増えました。加えて、センターのブランドアイデンティティに外傷センターであることを掲げたことから、「外傷センター」のキーワードでSEO対策を施しました。

具体的には、サイト内で「外傷センター」と置き換えられる部分の書き換え、タイトル、META情報へ「外傷センター」の追記調整、Googleビジネスプロフィールのアカウントを作成し外傷センターである旨と基本情報を掲載しました。

結果、「外傷センター」の検索順位を半年弱で6位まで引き上げました。

コンテンツ追加に伴う構造化

コンテンツが増え、グローバルメニューが複雑になったことから、ハンバーガーメニューを追加しました。かつ、お問い合わせボタンよりもコンバージョンポイントの「面接・施設見学」ボタンを目立たせました。

さらに、訪問からフォームへの遷移が少なかったため、画面右下にポップアップバナーを追加しました。

リンク先は予約ページです。バナーで気軽さ、カジュアルさを訴求し、面談申込のハードルを下げる狙いがあります。

掲載したい情報をGoogle カレンダーで外部共有、運用の仕組みを確立

私のような外部パートナーと連携する場合、必要な情報をスムーズに共有する仕組みで運用負担を軽くできます。

今回はウェブサイトに掲載したいイベント・登壇情報をまとめるGoogle カレンダーを作成し、関係する医局へ共有しました。

情報を追加すると私宛に通知が届くので、ウェブサイトにお知らせとして加工、掲載します。

メール、チャット等で情報共有するよりもずっと早く更新することができます。面倒な挨拶や、相手の稼働時間を考えることなく情報共有でき、担当者と直接の面識がなくても気軽に情報共有が可能な点で先方も私自身もメリットを感じています。

コンバージョンの分析

このサイトのコンバージョンはカジュアル面談、病院見学ですが、その中身も分析しています。

カジュアル面談でも、どういった内容を聞きたいのか。どんな属性で、いつコンバージョンしたのかを記録・分析し、定期レポートで共有します。共有する際に、お問い合わせした方の見込みの度合いをおおよそ測定しお伝えするようにしました。

他の大学病院から救急の知見を得たい医師からの病院見学もありました。今後の病院間の連携等につながると考えられます。採用にはつながりませんが、権威性と認知度につながる可能性があり、非常に良い傾向でした。

現在はカジュアル面談や施設見学の予約を受け付けた後に「誰がどう対応したのか」を把握できていない状態が続いていました。そこで、CV内容を一覧化した表(顧客リストのようなもの)をスプレッドシートで作成し、共有するよう仕組みづくりを進めています。

CV発生時に私がスプレッドシートに内容を転記し、先方(秘書の方)が担当医師振り分け後に担当者を記載、対応完了後に担当医がコメントを入力するという流れを実践しています。一般企業で言えば「追客」ができるようにフローを改善中です。

まとめ:戦略設計と運用でウェブサイトの成果は掴める!

以上が課題分析、戦略設計、運用、チューニングのすべてです。

ウェブサイトの課題のみならず、顧客、競合、自社を含む全体を俯瞰した戦略設計。

依頼主のリソースと運用負荷のバランスを取りながら行った運用体制と仕組みづくり。

そして、依頼主の前向きな姿勢と改善の熱意が成果につながったのだと思います。

運用開始から11ヶ月経った今も広告・エージェントを使っていません。にもかかわらず、運用開始3ヶ月目以降、毎月数件の問い合わせ・申し込みをいただいています。

かつ、採用数だけでなく患者数も増えるという副次的な効果も得られました。この施設の取り組みを知った他院の医師から、紹介を受けて来院される患者が増えたそうです。

目的と課題、戦略をきっちり組み立てて改善すれば実現できるのです。

成果が得られないサイトのほとんどは、戦略設計があいまいかつ対処療法的な手法を取っています。まずは現状分析と戦略設計に立ち返りましょう。あとは改善し続ける熱意です。

markeTransは戦略の解像度を上げ、デジタルマーケティングで成果を得る仕組みづくりに伴走します。成果=ゴールに向かって確実な一歩を踏み出しましょう。

この事例で使った戦略設計の具体的な実践方法はnote【フレームワークを活用したマーケティング戦略の描き方を解説します!】でまとめています。ぜひ、ご自身のウェブサイト改善でご活用ください。

また、実践してみたいけれど思うようにいかない方、ウェブサイトリニューアルに際しこの戦略を実践したい方はお気軽にお問い合わせください。

メディア

Media
一般社団法人 ウェブ解析士協会

(一社)ウェブ解析士協会の公式noteの運営を受託しています。
デジタルマーケティングに関するお役立ち情報を毎週投稿しています。

note 記事を読む