店舗Aのユーザー数が100人。
店舗Bが80人。
ExcelでSUMすれば180人です。
でも、GA4の全体ユーザー数を見ると160人。
「20人どこへ消えた?」
1,000店舗を超えるアクセス集計をしていると、こういうズレは普通に起きます。
原因はデータ欠損ではありません。
20人が店舗Aと店舗Bの両方を見ていたからです。
この問題を理解するのに、「GA4のユーザー数は足してはいけない」と覚えるだけでは少し足りません。
本質は、その指標が、今の切り口で足し算できる数字なのかです。
データ分析ではこれを「加法性」として考えると整理しやすくなります。
同じ20人が、2つの行にいる
店舗Aを見た100人の中に、店舗Bも見た20人がいる。
店舗Bは80人。
店舗ごとの表なら、Aの行にもBの行にもその20人が入ります。
ところが「AまたはBを見たユニークユーザー」を全体で数えるなら、20人は一度だけです。
だから、
100 + 80 = 180
ではなく、
100 + 80 – 20 = 160
になります。
ユーザー数は、集計する範囲が変わると重複排除のやり直しが必要な指標です。
「ユーザーだけ足せない」と覚えると、また事故る
ここで、
ユーザーは足せない。セッションやPVなら足せる。
と覚えたくなります。
でも、これも危険です。
セッション数でも、切り口によっては単純合計に注意が必要です。
たとえば、互いに重複し得るユーザー群や条件ごとに「その条件を満たしたセッション数」を別々に集計すれば、同じセッションが複数の集計結果へ含まれることがあります。
つまり、重要なのは指標名だけではありません。
その行同士が、互いに重複しない分類になっているか。
ここを見ます。
実務では3種類に分けて考える
私は集計表を作るとき、ざっくり次の3タイプに分けて考えます。
1. 足しやすい数字
イベント数やPVなど、同じ1件が複数カテゴリへ重複計上されないよう分類できている場合は、足し上げやすい指標です。
ただし「ページ別セッション」のように、1セッションが複数行へ出る切り口では注意が必要です。
2. 範囲ごとに数え直したい数字
ユーザー数が典型です。
店舗別ユーザーを足して全体ユーザーにするのではなく、全店舗を対象にした条件でもう一度ユニークユーザーを数えます。
3. そもそも足さない数字
CV率、エンゲージメント率、平均エンゲージメント時間などの「率・平均」です。
店舗AのCV率2%、店舗BのCV率4%だから全体6%、とはなりません。
母数を使って全体を再計算する必要があります。
この3つを意識するだけでも、Spreadsheetでの集計事故はかなり減ります。
多店舗レポートでは、合計欄を2種類持つ
実務で多店舗データを扱うとき、私は「行の合計」と「全体指標」を同じものとして扱わないようにしています。
たとえば、店舗別ユーザーを一覧にしたとしても、最終行に単純SUMを置いて「全体ユーザー」とは書きません。
必要なら、別クエリで対象店舗全体のユーザー数を取得します。
つまり、
- 明細合計:各行を足したもの
- 全体ユニーク:対象範囲を一括で数え直したもの
を分けます。
この2つが違うのは異常ではありません。
むしろ、同じものとして扱う方が問題です。
流入元別でも同じことが起きる
店舗だけではありません。
たとえば期間内に、同じ人がアプリ経由でもGoogle検索経由でも訪問したとします。
ユーザーを流入元別に集計すれば、複数のグループへ登場する可能性があります。
初回流入で分類するのか、セッション流入で分類するのかでも意味が変わります。
「app users」「organic users」と書かれた数字を見たら、その数字がユーザーをどのスコープで分類したものかまで確認します。
BigQueryなら解決する、ではない
BigQueryを使えば、user_pseudo_idなどを重複排除して、疑似ユーザー単位の人数を自分で集計できます。
でもBigQueryを使っただけで問題が消えるわけではありません。
「何を1ユーザーとするか」「どの範囲で重複排除するか」は、結局こちらで決める必要があります。
さらにGA4画面ではReporting identityなどが適用されるため、疑似IDを数えた結果と必ず完全一致するとも限りません。
ツールより先に、集計定義です。
合計が合わないときの確認順
集計表の合計がGA4と違ったら、私は次を確認します。
- 指標は同じか
- 集計期間は同じか
- 行同士は排他的な分類か
- 同一ユーザー・セッションが複数行へ出る可能性はないか
- 率・平均を単純合計していないか
- 全体値は「行のSUM」ではなく別途取得すべきではないか
「GA4の数字がおかしい」と考えるのは、その後です。
足し算できるかどうかは、指標名では決まらない
GA4の集計で怖いのは、Excelが間違った計算をすることではありません。
Excelは、指定されたとおり正確にSUMしてくれます。
怖いのは、足してはいけない数字を、正確に足してしまうことです。
ユーザー数のズレは、その分かりやすい例です。
だから私は、レポートを作るとき「この列は何を数えているか」だけでなく、
この列は、この切り口で足してよいか
まで考えるようにしています。
数字を正しく出すためというより、その後の判断を間違えないためです。
関連する知見
集計表の作成だけでなく、数字の定義と比較可能性まで設計します。
