サイトが古くなった。スマートフォンで使いにくい。問い合わせを増やしたい。リニューアルのきっかけはさまざまです。ただ、そのまま制作に入ると、見た目は変わっても、事業上の課題が残ることがあります。
最初に決めたいのは「どんなサイトをつくるか」より、「誰の、どんな判断を助け、何を変えたいか」です。ここが定まると、必要なページも、伝える言葉も、公開後に見る数字も選びやすくなります。
1. 「リニューアルしたい」を、解決したい課題に戻す
たとえば「月30件の相談が必要なのに、いまは10件」という状況を考えます。これは説明のための仮の数字です。差が20件あると分かっても、サイト全体をつくり直すべきかは、まだ決まりません。
そもそも必要な人に知られていないのか。訪問してもサービスの違いが伝わらないのか。検討はされているのに、相談の方法が分かりにくいのか。同じ問い合わせ不足でも、改善する場所は変わります。
営業でよく聞かれる質問、問い合わせの内容、アクセス解析、実際の画面を並べて、「現状」と「目指す状態」の間にある詰まりを探します。数字だけでは理由が分からず、担当者の感覚だけでは頻度が分かりません。両方を合わせて、まず確かめるべき仮説を置きます。
2. 顧客像は、属性より「判断する場面」まで考える
「30代の会社員」「中小企業の経営者」だけでは、必要な情報を決めきれません。同じ属性でも、初めて情報を集める人と、候補を比較している人では、知りたいことが違うからです。
- どんな出来事がきっかけで、探し始めたのか。
- いま何に困り、どんな状態になりたいのか。
- 他にどんな選択肢と比べているのか。
- 依頼や応募を決める前に、何を不安に感じるのか。
- 社内や家族に説明するとき、どんな根拠が必要なのか。
この問いを、営業・採用の現場で得た声や、顧客へのインタビューで確かめます。少人数の声は仮説を見つける手がかりです。そのまま顧客全体の意見と決めつけず、問い合わせ記録やデータとも照らします。
閲覧環境も確認します。PCからの訪問が多くても、外出先のスマートフォンで初めて知り、後日PCで比較する人がいるかもしれません。端末の比率は優先順位の材料にしつつ、どちらでも必要な情報へ進めることを基本にします。
3. 自社の強みを、相手が選ぶ理由へ翻訳する
自社が誇りに思うことと、顧客が選ぶ理由は、必ずしも一致しません。「長い歴史があります」「専門家がいます」という事実も、それによって相手の何が良くなるのかまで伝えて、初めて判断材料になります。
顧客が求めていること、比較先が提供していること、自社が実際に提供できること。この3つを照らして、誰にどんな価値を約束するかを言葉にします。競合は同業他社だけとは限りません。内製する、別の方法で解決する、いまは何もしない、といった選択肢も含めて考えます。
そのうえで、約束を裏付ける実績、具体的な進め方、担当者の専門性、顧客の声を用意します。強い言葉を増やすより、「そう言える理由」が見えることが大切です。
4. 情報の順番と、次の行動を設計する
戦略をページに落とすときは、社内の部署や資料の分類を、そのままメニューにしないようにします。訪問者が知りたい順番に沿って、内容と導線を組み立てます。
たとえば相談を目的とするサービスサイトなら、「自分の課題に合うか」「何をしてもらえるか」「任せられる根拠はあるか」「費用や進め方はどうか」「どこから相談できるか」という問いに答える構成が考えられます。すべてのサイトに同じ順番が当てはまるわけではありません。顧客の検討場面に合わせて調整します。
最終的な行動だけでなく、その前に必要な判断も設計します。まだ依頼を決められない人に、いきなり見積もりだけを求めても進みにくい。事例を読む、条件を確認する、状況を相談するなど、検討段階に合う入口を用意します。
5. 公開後に「誰が、何を見て、変えるか」まで決める
更新担当が決まっていない事例欄、集まる見込みのないインタビュー、誰も確認しないレポート。制作時には魅力的でも、続けられなければサイトは止まります。
必要な情報を誰が集めるか。誰が確認し、いつ公開するか。問い合わせは誰が受け取り、どう対応するか。公開前に役割と流れを決めます。担当者に新しい仕事を増やすだけでなく、日常の業務から情報が集まる方法を考えます。
計測も同じです。問い合わせ件数だけでなく、相談内容が事業に合っているか、商談や採用につながったかまで確認できるようにします。アクセス数は、その結果を理解するための材料です。
制作を始める前に、一枚にまとめておく
戦略資料を分厚くする必要はありません。少なくとも、次の項目を関係者が同じ言葉で説明できる状態にします。
- 変えたいこと:事業上の課題と、目指す状態。
- 届けたい相手:どんな場面で、何を判断する人か。
- 選ばれる理由:提供する価値と、それを裏付ける事実。
- 必要な情報と行動:判断を助ける内容と、その次の一歩。
- 続ける仕組み:担当者、情報の集め方、見直すタイミング。
- 確かめ方:成果の定義と、判断に使う数字・現場の声。
この一枚があれば、デザイン案や機能の提案を「好きかどうか」だけで選ばずに済みます。目的に必要か、顧客の判断を助けるか、運用できるか。リニューアルの戦略は、制作と公開後の改善をつなぐ判断基準になります。
初出:2023.05.15/再編集:2026.09.15
