採用サイトを公開した。求人の案内も出している。それでも問い合わせが来ない。そんなとき、まず集客を増やそうと考えがちです。ただ、訪れた人が判断できる材料と、次に進める入口がそろっているかも確認したいところです。

埼玉医科大学総合医療センター 高度救命救急センターの採用支援では、サイトの情報設計、SNSとの連携、現場の運用を合わせて見直しました。この記事では、2023年に公開した支援記録をもとに、採用サイトを運用する際の考え方を整理します。

当時の記録では、運用開始3か月目以降、広告・採用エージェントを使わずに毎月数件の問い合わせ・申し込みがありました。ここでいう成果は、カジュアル面談や施設見学などへの申し込みです。採用人数と同じ意味ではありません。また、特定の取り組みだけの効果を切り分けたものでも、現在の成果を示すものでもありません。

採用側の言葉を、候補者が判断できる情報に変える

「こんな人を募集しています」という情報は必要です。ただ、それだけでは、候補者が「自分はここで働けそうか」を判断するには足りません。

この支援では、対象に近い人へのインタビューやSNS上の声から、経験を積める環境、指導を受けられること、職場の雰囲気などへの関心を整理しました。同時に、経験が少ない自分でもやっていけるのか、という不安も仮説に置きました。

そこで、施設が伝えたい実績だけでなく、候補者にとってどんな経験や成長につながるかを説明する構成へ整理しました。理念をなくすのではなく、働く人の日常や具体的な機会と結び付け、入職後を想像できるようにします。

採用サイトを見直す際には、募集要項に加えて、「候補者からよく聞かれること」「入職後に初めて分かること」を現場から集めてみてください。組織の中では当たり前でも、外からは分からない情報が、判断を助けることがあります。

応募を決める前に、確かめられる入口をつくる

仕事内容に関心があっても、すぐ応募を決められるとは限りません。見学で雰囲気を知りたい、まず話を聞きたい、条件を確かめたい。そうした段階に応じた行動を用意します。

この事例では、カジュアル面談や施設見学への入口を重視しました。単に「お問い合わせ」と置くより、何を申し込めるのか、その後どうなるのかが分かる方が、次の一歩を考えやすくなります。

サイト内の導線も、情報を読み終えたところから申し込みへ進めるよう整理します。ボタンを増やすだけでなく、その前に不安を解消する情報があるか、スマートフォンでも条件や手順が読めるかを確認します。

SNSは知るきっかけ、サイトは検討する場所

SNSとサイトを別々に運用すると、投稿の反応は増えても、採用の検討につながらないことがあります。この支援では、SNSで日常や活動を知ってもらい、サイトで詳しい情報を確かめる流れを意識しました。

具体的には、医師のインタビュー、勉強会の開催レポート、施設の活動情報などをサイトに蓄積し、関連するSNS投稿から詳細へ案内しました。SNSのリンク先をいつもトップページにするのではなく、投稿で関心を持った内容を、そのまま確認できるページへつなぎます。

たとえば、一つのインタビューページに複数人の話をまとめる場合でも、各人の位置へ進むページ内リンクを用意すれば、一人ずつ紹介できます。情報を何度もつくり直さず、候補者との接点を増やす工夫です。

当時は運用負荷や対象者との接点を考え、Xを中心に取り組みました。ただし、どの組織でもXが最適という意味ではありません。候補者がどこで情報を得ているか、現場がどんな内容を継続して出せるかを見て選びます。

投稿数より、続けられる役割分担を決める

運用開始時には、日ごとに担当を決め、多くの投稿を目指しました。しかし、現場の負担が大きく、想定どおりには進みませんでした。

そこで、日付ではなく投稿内容ごとに担当を分ける形へ調整しました。自分が何について発信すればよいかが決まると、毎回ゼロから題材を考える負担が減ります。投稿の見本も共有し、迷ったときに相談できる窓口を設けました。

反応が得られた取り組みでも、現場の負担が大きければ続けられません。匿名の質問を受け付ける仕組みを試した際は、対応負荷を踏まえて終了したこともあります。「反応があるから続ける」だけでなく、運用できる範囲に収まっているかを判断します。

外部の支援者に求められるのは、投稿を促すことだけではありません。情報が集まり、確認され、公開されるまでの流れを整え、現場が本来の業務と両立できるようにすることです。

数字を見る会議を、次の行動を決める場にする

定例では、反応の良かった投稿やサイトの利用状況を共有し、次に追加する情報や修正箇所を決めました。数字を報告して終わるのではなく、担当者と実施内容まで具体化します。

採用サイトでは、次の段階を分けて確認すると、課題を考えやすくなります。

  • 知る:SNS、検索、イベントなど、どんな接点から訪れたか。
  • 検討する:仕事内容、働く人、条件などの情報へ進めたか。
  • 相談する:面談・見学の案内やフォームまで進み、申し込んだか。
  • 対応する:申し込み後、誰が連絡し、その後どうなったか。

最後の対応まで見ないと、申し込みが増えても採用活動として良くなったか分かりません。事例では、受け付けた相談と担当者、対応状況を共有する仕組みづくりにも取り組みました。

件数だけでなく、誰から、どんな目的の相談があったかも確認します。採用希望者の見学と、他施設からの情報交換では、どちらも意味のある接点でも、採用成果としての扱いは異なります。

自社の採用サイトなら、どこから見直すか

最初から施策を増やす必要はありません。候補者が判断するための情報、検討段階に合う入口、SNSからの導線、公開後に続ける体制。この4つを、実際の問い合わせや現場の声と照らして確認します。

広告やエージェントも、必要に応じて使う選択肢です。この事例から持ち帰りたいのは、それらを使わないこと自体ではなく、知ってもらってから相談に至るまでの流れと、その後の対応をつなぐ考え方です。

候補者の判断を助ける情報を整え、現場が続けられる形で運用する。その積み重ねが、自社の採用活動を改善していく土台になります。

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初出:2023.09.19/再編集:2026.09.15