Webサイトをつくる。SNSを始める。広告を出す。手段は思いついても、それを選ぶ理由があいまいなままでは、成果の判断も難しくなります。
このシリーズでは、事業の目的から顧客理解、ブランド、施策と指標までを5回に分けて整理します。もとになったのは、ライターのふじねさんと行った戦略づくりの対話です。当時の検討例を残しながら、ほかの事業でも使える問いに再構成しました。
最初に、何のための事業かを言葉にする
最初から立派な理念を完成させる必要はありません。誰のどんな困りごとに関わりたいのか。仕事を通じてどんな変化をつくりたいのか。まずは、普段の言葉で書いてみます。
ここで役立つのが、ミッション・ビジョン・バリューという整理です。ミッションは事業の目的、ビジョンは目指す状態、バリューは日々の選択で大切にする基準として考えると、話し合いやすくなります。
言葉の分類を正解に合わせることよりも、実際の判断に使えることが大切です。「成長を支援する」と書くなら、誰のどんな成長かまで掘り下げます。提供する仕事とつながらない言葉は、まだ広すぎるのかもしれません。
理想を、相手との関係が見える言葉へ
ふじねさんとの対話では、人の可能性を見つけてつなげたいという思いから、事業者にとって手近で身近な存在を目指す方向へ、言葉を具体化していきました。
この変化で見えやすくなるのは、仕事の相手と、築きたい関係です。文章を納品するだけなのか。考えを聞き、事業の魅力を伝えるところまで関わるのか。それによって、必要な能力や提案の仕方も変わります。
ここでの言葉は当時の検討例です。同じ表現を使うのではなく、自分の事業なら「誰にとって、どんなときに頼れる存在か」を考えてみてください。
目標は、数字の意味をそろえて置く
目的が定まったら、一定期間でどこまで進みたいかを考えます。売上、利益、契約数などの数字は、同じ言葉でも人によって捉え方が違うため、定義からそろえます。
たとえば年間売上240万円を目指す、という仮の例なら、平均単価5万円の仕事を年間48件受注すると計算上は届きます。ただし、これは売上の計算であり、経費を引いた利益や手取りの金額ではありません。
さらに、1件に必要な時間、修正対応、営業に使う時間を含めて、年間48件を提供できるか確かめます。数字を割り算できることと、続けられる事業であることは別です。期間、単位、費用、提供能力を一緒に置くと、目標が現実の判断につながります。
判断の基準は、迷う場面で確かめる
バリューは、良い言葉を並べるだけでは機能しません。納期が短い依頼を受けるか。専門外の仕事をどう扱うか。単価を下げて件数を増やすか。こうした場面で何を優先するのかを考えます。
- 引き受けたい仕事と、今は引き受けない仕事は何か。
- 品質を守るために、相手にもお願いしたい条件は何か。
- 売上と提供時間の両方を考えたとき、無理がないか。
- 判断に迷ったとき、どの約束に立ち戻るか。
抽象的な方針を具体的な場面に当てはめると、言葉の不足や矛盾が見つかります。最初から固定せず、実際の仕事を通じて更新していきます。
第1回で、1枚にまとめること
事業の目的、目指す相手との関係、期限を区切った目標、守りたい条件。この4つを、短い文章で1枚にまとめます。決まっていないことは、未確定と書いて構いません。
次は、その目標が顧客や競合の状況と合っているかを確かめます。自分の思いを出発点にしつつ、相手が求めるものと接続していく段階です。
このシリーズは、ライターのふじねさんとの戦略づくりの対話をもとに再編集しています。
初出:2023.11.22/再編集:2026.09.15
