自分が提供したい仕事と、顧客が頼みたい仕事は、必ずしも同じではありません。目的を言葉にした次は、相手が何に困り、どんな選択肢を持っているかを確かめます。

戦略設計シリーズの第2回は、顧客・競合・自社という3つの視点から、選ばれる理由を探す段階です。ふじねさんとのライター事業の検討を例に、分析を具体的な問いへ落とし込みます。

顧客を見るときは、依頼の前後まで広げる

ライターに文章を頼む人は、何に困っているのでしょうか。書く時間がないこともあれば、伝えたい内容が整理できない、専門的な話を読み手に分かる形にできない、という場合もあります。

同じ「記事制作」でも、解決したいことは違います。さらに、依頼前に何を準備し、納品後に誰が確認して公開するのかまで見ると、文章以外の負担も分かります。

  • どんな出来事が、依頼を考えるきっかけになるか。
  • 今はどのように対応し、何がうまくいっていないか。
  • 頼む際に不安なのは、費用、品質、納期、それとも説明の負担か。
  • 仕事が終わったとき、相手は何ができるようになりたいか。

顧客の言葉を集めるときは、発言とこちらの解釈を分けます。「修正が多くて大変だった」という発言から、すぐに「安さを求めている」と結論づけず、どこで認識がずれたのかを聞きます。

競合は、同業者だけとは限らない

顧客が比較するのは、別のライターだけではありません。社内で書く、自分で学ぶ、AIで下書きをつくる、そもそも記事を出さない。目的によっては、動画や別の伝達手段を選ぶこともあります。

競合を広げるのは、すべてに勝つためではありません。顧客がどの場面で外部の支援を必要とするかを知るためです。単純な文字数の比較では見えない、聞き取りや編集、確認の進行に価値があるかもしれません。

比較する軸も、自社が有利になるものを後から選ぶのではなく、顧客が実際に重視する条件から考えます。価格だけでなく、任せられる範囲や専門領域への理解など、意思決定に関係する項目を確かめます。

自社の強みを、相手の利益に翻訳する

markeTransでは、3Cの整理に、自社の優位性と顧客が受け取る価値を加えて考えています。「何ができるか」から「相手にどんな変化が起こるか」へ、説明を一段進めるためです。

たとえば、事業者の話を丁寧に聞いて文章にできるという能力は、相手にとっては、頭の中にある思いを整理し、顧客へ伝えられる状態をつくる価値になります。ふじねさんの検討でも、書く作業だけでなく、事業者の考えを理解して伝える関わりが論点になりました。

ただし、それを強みと呼ぶには根拠が要ります。実際の依頼で評価されたこと、継続につながった理由、制作前後で変わったことを集めます。資格や経験年数は裏付けの一部になっても、それだけで顧客の利益を説明できるわけではありません。

分析には、事実・解釈・未確認を残す

外部環境を整理するPESTや、自社と環境を見渡すSWOTも役立ちます。ただし、枠をすべて埋めたことが成果ではありません。事業判断に影響する変化を選び、その根拠を確かめることが目的です。

記録には「確認した事実」「そこから考えた仮説」「次に確かめること」を分けて書きます。少人数の意見を市場全体の傾向に広げたり、思い込みを競合の特徴として書いたりしないためです。

第2回の成果物は、顧客の困りごと、代替手段、自社が提供できる価値、裏付け、未確認の点を並べたメモです。次回はその中から、まず誰に届けるかを絞っていきます。

第1回:事業の目的と、目指す状態をそろえる

第3回:ペルソナを、判断に使える顧客像にする

このシリーズは、ライターのふじねさんとの戦略づくりの対話をもとに再編集しています。

初出:2023.12.06/再編集:2026.09.15