「高品質なサービスを提供します」
「お客様に寄り添って伴走します」
「豊富な経験があります」
こうした言葉は、企業のWebサイトでよく見かけます。どれも間違ってはいません。ただ、それだけで「この会社なら任せられそうだ」と思ってもらえるかというと、少し弱い。
なぜなら、その言葉を信じていい理由がまだ示されていないからです。
マーケティングでは、この「なぜそれを信じられるのか」という根拠を Reason to Believe(RTB) と呼ぶことがあります。
RTBという言葉自体はそれほど一般的ではありませんが、Webサイトや営業資料、広告、ブランド設計を考えるうえでは、とても重要な考え方です。
この記事では、RTBの意味を説明するだけでなく、Who・Whatとの関係、RTBの作り方、BtoB企業やWebサイトでどう表現するかまで、実務で使える形に整理します。
Reason to Believe(RTB)とは
Reason to Believeを直訳すると、「信じる理由」です。
マーケティングでは、企業や商品が顧客に対して示す価値や約束に対して、
「なぜ、その約束を信じていいのか」
を説明する根拠として使われます。
たとえば、
「業務効率を改善します」
というメッセージがあったとします。
これだけでは、まだ企業側の主張です。
そこに、
「導入企業の平均作業時間が30%削減された」
「特許技術を使っている」
「専門資格を持つ担当者が設計する」
「100社以上で導入されている」
といった根拠が加わることで、主張に説得力が生まれます。
この「主張を支える事実」がRTBです。
RTBは、単なる「強み」ではない
ここは少し注意が必要です。
RTBと「強み」は似ていますが、同じものではありません。
たとえば、
「20年以上の実績があります」
という事実があったとしても、それだけではRTBとして十分とは限りません。
大切なのは、
その事実が、顧客に約束している価値とつながっているか
です。
20年続いていることが、顧客にとってどのような価値につながるのか。
その関係まで説明できて初めて、「信じる理由」になります。
RTBは、自社のすごさを並べるためのものではありません。
顧客への約束を裏付けるためのものです。
なぜマーケティングにRTBが必要なのか
マーケティングでは、顧客に対して何らかの価値を伝えます。
「早い」
「安い」
「高品質」
「成果につながる」
「専門性が高い」
しかし、ほとんどの市場では競合も似たようなことを言っています。
BtoB企業のWebサイトを見ていると、
「伴走型支援」
「課題に寄り添う」
「ワンストップ対応」
「豊富な実績」
といった表現が並んでいることも珍しくありません。
問題は、言葉そのものではありません。
なぜ御社がそれを実現できるのかが分からないことです。
顧客からすると、
「それ、本当にできますか?」
という疑問が残ります。
RTBは、この疑問に答える役割を持っています。
「良さそう」を「納得できる」に変える
顧客は、Webサイトに書いてあることをそのまま信じるわけではありません。
特にBtoBでは、契約金額が大きかったり、社内説明が必要だったりするため、
「なぜこの会社を選ぶのか」
を説明できる材料が必要になります。
そのとき、
「なんとなく良さそう」
だけでは弱い。
「こういう実績がある」
「こういう仕組みで提供している」
「この専門性がある」
「このプロセスで品質を担保している」
といった根拠があることで、判断しやすくなります。
RTBは、売り文句を増やすためのものではなく、顧客の判断材料を増やすためのものだと考えると分かりやすいと思います。
Who・What・RTBはセットで考える
RTBだけを単独で考えると、企業紹介になりがちです。
実務では、
Who
↓
What
↓
Reason to Believe
という順番で整理すると考えやすくなります。
Whoは「誰に」。
Whatは「何を提供するか」。
RTBは「なぜそれを信じられるか」です。
たとえば、Web制作会社を例にすると、
「中小企業の経営者に対して、成果につながるWebサイトを提供します」
というだけでは、まだ抽象的です。
そこに、
「公開後もアクセス解析を行い、改善まで支援する」
「マーケティング設計から制作まで一貫して行う」
「同業種での改善実績がある」
といった根拠が加わることで、Whatの説得力が上がります。
重要なのは、RTBから考え始めないことです。
資格や実績を並べたあとで、
「これは何の根拠になるのだろう」
と考えると、どうしても自社都合になりやすい。
先に、
「誰に、どんな価値を約束するのか」
を決め、その価値を裏付けられる材料を探す方が自然です。
RTBの作り方
RTBは、コピーライティングだけで作るものではありません。
むしろ、文章を書く前の整理の方が重要です。
まず決めるべきなのは、顧客に対して何を約束するのかです。
たとえば、
「採用につながるWebサイトをつくる」
「営業活動を効率化する」
「社内でマーケティングを判断できる状態をつくる」
といった価値です。
次に、その価値を実現できる理由を洗い出します。
実績、資格、技術、仕組み、体制、プロセス、データ、顧客の声などです。
ただし、ここで終わらせてはいけません。
競合企業も同じことを言えてしまう場合、それだけでは強いRTBにはなりません。
最後に、
「その根拠は、顧客が約束された価値を信じる材料になっているか」
を確認します。
この確認が抜けると、
「資格を10個持っています」
「創業30年です」
「全国対応しています」
という、自社紹介だけが増えてしまいます。
RTBになりやすいもの
RTBとして使える材料は、業種によって大きく変わります。
ただ、よく使われるものを整理すると次のようになります。
| 種類 | 例 | 顧客に伝わること |
|---|---|---|
| 実績・数字 | 導入社数、改善率、継続率 | 実際に成果が出ている |
| 専門性 | 資格、経験、専門領域 | 任せる理由がある |
| 技術 | 独自技術、特許、システム | 他社にはない実現方法がある |
| プロセス | 調査方法、品質管理、改善手順 | 再現性がある |
| 体制 | 専門チーム、担当体制 | 安定して提供できる |
| 第三者評価 | 顧客の声、受賞歴、認証 | 自社だけの主張ではない |
ただし、どれを使えばいいかは一律ではありません。
顧客に約束している価値によって、必要なRTBは変わります。
BtoBやWebサイトでは、RTBをどう見せるか
RTBというと、「会社概要に実績を載せる」という話になりがちですが、実際にはWebサイト全体で表現できます。
たとえばサービスページで、
「マーケティング戦略から支援します」
と書くのであれば、
その下に、実際の支援プロセスや分析方法、事例を見せる。
事例ページでは、完成したWebサイトだけではなく、
「どんな課題があり」
「どう判断し」
「何を変え」
「結果どうなったのか」
まで見せる。
Aboutページでは、資格の一覧だけでなく、
その専門性が普段の仕事でどう使われているのかを説明する。
知見記事もRTBになります。
専門的なテーマについて、実際のデータや検証プロセスを公開していれば、
「この会社は本当にここまで考えて仕事をしている」
という根拠になります。
つまりRTBは、一文で書くものとは限りません。
Webサイト全体がRTBになることもあります。
「実績があります」だけでは弱い
RTBを考えるときに、よくあるのが「数字を出せばいい」という発想です。
もちろん数字は強い材料です。
ただし、
「取引実績500社」
という数字だけでは、
「だから何を任せられるのか」
までは分かりません。
たとえば、
「採用サイトのリニューアル後、応募導線の改善を繰り返し、問い合わせが継続的に発生する状態になった」
のであれば、
その実績は、
「Webサイトを作って終わるのではなく、改善まで支援できる」
という価値のRTBになります。
数字そのものより、どの約束を裏付ける数字なのかが重要です。
弱いRTBになりやすいパターン
RTBを考えるとき、最も多いのは「自社では差別化できていると思っているけれど、顧客から見ると違いが分からない」という状態です。
たとえば、
「丁寧な対応」
「豊富な経験」
「高品質」
「伴走型」
という表現。
これらが悪いわけではありません。
ただし、多くの企業が言えてしまいます。
「伴走します」と言うなら、
何を、どこまで、どの頻度で一緒に考えるのか。
「高品質」と言うなら、
何によって品質を担保しているのか。
「経験豊富」と言うなら、
その経験が顧客のどんなリスクを減らすのか。
ここまで落とし込む必要があります。
もう一つ注意したいのが、事実と価値がつながっていないケースです。
「上級資格を保有しています」
「創業20年です」
「社員が50名います」
という事実があっても、顧客にとって意味がなければ、RTBとしては機能しません。
markeTransで考えるRTB
私自身の仕事で考えてみます。
markeTransでは、
「マーケティングを、Webに翻訳する。データを、次の判断に変える。」
という考え方を掲げています。
ただ、この言葉だけでは、まだ約束です。
では、なぜそれを実現できるのか。
一つは、Webサイトだけを切り離して考えないことです。
実際の案件では、Webサイト、SNS、検索、アクセス解析、問い合わせ導線などを横断して確認しながら、
「数字がどうなったか」
だけではなく、
「次に何を変えるべきか」
まで考えます。
GA4やSearch Consoleを使えること自体がRTBなのではありません。
それらのデータを使いながら、顧客行動を読み、次の判断につなげていることがRTBになります。
資格も同じです。
上級ウェブ解析士などの資格を持っていることは一つの事実ですが、それだけでは提供価値にはなりません。
実際の支援で、
計測設計を行い、
数字を読み、
仮説を立て、
改善につなげている。
そこまでつながって初めて、
「データを次の判断に変える」
という約束の根拠になります。
Webリニューアルでも同じです。
markeTransでは、関谷一人がすべて制作するのではなく、案件に合わせてデザイナーやエンジニアなどの専門家を組みます。
これは「外注しています」という話ではありません。
案件ごとに必要な専門性を組み合わせる
という提供方法そのものが、
「目的に合わせてWebを設計する」
という価値を裏付けています。
こうして考えると、RTBは後から付け足すコピーではなく、仕事のやり方そのものから生まれるものだと分かります。
RTBは「強く見せるため」のものではない
マーケティングでは、「どう差別化するか」という話になりがちです。
そのためRTBも、
「他社より強く見せる材料」
として考えてしまうことがあります。
でも、私は少し違うと思っています。
RTBの役割は、強く見せることより、
顧客が安心して判断できる材料を増やすこと
です。
自社ができること。
できないこと。
どんな方法で支援するのか。
なぜその方法を採っているのか。
どんな実績があるのか。
それらをきちんと開示する。
その結果として、
「ここなら頼めそうだ」
と思ってもらえる。
RTBは、その判断を支えるための情報設計だと考えると、Webサイトにも落とし込みやすくなります。
まとめ:RTBは「約束を信じてもらうための根拠」
Reason to Believeは、その名の通り、
「なぜ、その会社の言っていることを信じていいのか」
を示すための考え方です。
重要なのは、実績や資格を大量に並べることではありません。
最初に、
誰に、どんな価値を約束するのかを決める。
そのうえで、
なぜ自社ならそれを実現できるのかを、事実で示す。
この順番です。
Webサイトを見直すときも、
「もっと強みを出そう」
と考える前に、
「私たちは何を約束していて、その約束を信じてもらう材料は十分にあるだろうか」
と考えてみると、見直すべき場所がかなり見えてきます。
RTBは、コピーライティングのテクニックというより、企業の提供価値と、その根拠をつなぐ設計なのだと思います。
