誰に届けるかが見えてきたら、その相手にどんな価値を約束するかを考えます。ロゴやキャッチコピーを決める前に、仕事の中身と、相手が受け取る価値をそろえる段階です。

戦略設計シリーズの第4回では、ブランドを顧客との約束として言葉にします。自分たちがどう見られたいかに加えて、実際にどう受け止められているかを確かめます。

連想を書き出しても、それはまだ仮説

自社やサービスから連想する言葉を並べると、考えを整理しやすくなります。丁寧、速い、相談しやすい、専門的。言葉の関係を見ながら、どこを大切にしたいかを探します。

ただし、社内で何度も出てきた言葉が、そのまま顧客の認識とは限りません。相談時や納品後に聞いた言葉、継続を決めた理由、紹介時の説明と照らします。目指す姿と、現在の評価を分けることで、伝え方だけでなく仕事の改善点も見えてきます。

選ばれる前提と、選ぶ理由を分ける

顧客が当然求める基本条件と、比較の中で選ぶ理由になる違いを整理します。マーケティングでは、前者をPOP、後者をPODとして考えることがあります。

ライターの仕事なら、正確さや納期を守ることは基本条件になり得ます。その上で、特定分野への理解、聞き取りから情報整理まで関われることなどが、相手によっては選ぶ理由になります。

基本条件が満たされていなければ、独自性だけを強調しても頼みにくいものです。一方、基本条件だけでは、ほかの候補との違いが伝わりにくくなります。両方を分けて確認します。

比較軸は、顧客の判断から選ぶ

競合と自社を2本の軸で整理するポジショニングマップは、違いを話し合うために使えます。ただし、自社が右上に来るように軸を選んでも、顧客の選び方と関係がなければ意味がありません。

価格と対応範囲、専門領域と進め方など、相手が実際に比較する条件から軸を考えます。2本の軸では表せない条件もあるため、図だけで優劣を決めないことも大切です。

また、比較対象について分からないことを、劣っていると置き換えてはいけません。公開情報や実際の比較理由で確認できたことと、推測を分けて扱います。

機能だけでなく、仕事を通じて得られる状態を見る

顧客が受け取る価値には、作業が進むといった機能面と、安心して任せられるといった気持ちの面があります。必要に応じて、自分らしい事業を表現できるといった意味も考えられます。すべての分類を無理に埋める必要はありません。

ふじねさんとの対話では、事業者の思いを聞き、その仕事の魅力を伝えることへの関心がありました。ここから考えられるのは、単に文章を納めるだけでなく、相手の考えが整理され、伝えられる状態をつくる価値です。

ただし、「安心」「魅力が伝わる」と言うだけでは約束として広すぎます。どう聞き取り、どの段階で認識を合わせ、何を確認するのかまで説明すると、仕事の実態が見えます。

約束には、確かめられる裏付けを添える

ブランドの言葉は、実際の提供内容で支えます。事例、制作の手順、担当者の経験、顧客の評価などを、約束と対応させて示します。資格を並べるだけでなく、それを仕事でどう使うかを伝えます。

第4回では、「誰に」「何を提供し」「どんな状態をつくるか」「その根拠は何か」を短くまとめます。その文章と、サイト、提案、実際の進め方にずれがないかを見直してください。

次回は、この約束を施策と指標につなげます。伝える言葉が整ったところから、実際に届け、確かめる段階へ進みます。

第3回:ペルソナを、判断に使える顧客像にする

第5回:施策と指標を、事業の目標につなぐ

このシリーズは、ライターのふじねさんとの戦略づくりの対話をもとに再編集しています。

初出:2024.02.14/再編集:2026.09.15