SNSから来たユーザーが、ほとんど再訪していない。
分析中、そんな数字が出ました。
そこでブラウザ環境を分けてみると、通常ブラウザ279人では後日の再訪が5人。
一方、In-App / WebViewに分類した32人では、同じ条件での再訪が0人でした。
「やっぱりInstagramのアプリ内ブラウザだと、再訪が追えないのでは?」
そう考えたくなります。
でも、このデータだけではそこまで言えません。
この記事は「アプリ内ブラウザが原因だった」という解説ではなく、この結果からどこまで疑ってよく、どこから先は仮説なのかを整理した調査ログです。
まず、出ていた数字
SNS接触ユーザーの一部をブラウザ環境で分類すると、次のようになりました。
| ブラウザ群 | ユーザー | 採用情報到達 | 研修情報到達 | 予約ページ到達 | 後日再訪 |
|---|---|---|---|---|---|
| 通常ブラウザ | 279 | 23(8.2%) | 10(3.6%) | 5(1.8%) | 5(1.8%) |
| In-App / WebView | 32 | 3(9.4%) | 3(9.4%) | 0 | 0 |
In-App / WebView側でも、採用情報や研修情報までは読まれています。
つまり、初回訪問時点で「アプリ内ブラウザだから行動しない」とは言えません。
違いが見えたのは、その後です。
通常ブラウザでは少数ながら再訪が確認できた。
In-App / WebViewでは0だった。
仮説1:ブラウザが変わり、別ユーザーに見えている
GA4のWeb計測では、_ga CookieのClient IDなどをもとにしたDevice IDがユーザー識別に使われます。
そのため、
Instagramアプリ内ブラウザで初回訪問
→ 数日後、SafariでGoogle検索
→ 再訪
となった場合、人間としては同じ人でも、GA4上で必ず同じユーザーとしてつながるとは限りません。
これは、今回の「WebView側だけ再訪0」という結果と整合する仮説です。
ただし、整合することと、原因だと証明できたことは別です。
仮説2:単純に母数が小さい
In-App / WebView側は32人です。
通常ブラウザ279人と比べるとかなり小さい。
通常ブラウザの再訪率は5 / 279、約1.8%でした。これと同じ再訪率だったと仮定して32人を観測しても、期待される再訪者は約0.6人です。
さらに単純な二項モデルで計算すると、**32人全員が再訪0になる確率は約56%**あります。半分以上です。
もちろん、各ユーザーが同じ確率で独立に再訪するという単純化した計算なので、厳密な検定ではありません。それでも「0人だったこと自体は珍しい結果ではない」と考える材料にはなります。
つまり、今回の数字だけなら、ブラウザ分断がなくても十分0になり得ます。
ここを無視して「WebViewは再訪できない」と結論づけるのは危険です。
仮説3:WebViewの人は行動特性が違う
もう一つあります。
アプリ内ブラウザをそのまま使う人と、外部ブラウザで開く人では、もともとの利用行動が違う可能性があります。
SNSを流し見していて一瞬だけ開いた。
反対に、通常ブラウザへ移してじっくり見る人は検討度が高い。
こうした差があるなら、計測技術だけでなくユーザー行動自体も異なります。
今回のデータだけでは分離できません。
だから、この記事で言えるのはここまで
今回の結果から言えることを整理します。
言えること
- 通常ブラウザでは279人中5人の再訪を確認した
- In-App / WebViewでは32人中0人だった
- 初回の採用・研修ページ閲覧はWebView側でも確認できた
可能性として考えられること
- アプリ内ブラウザと後日のSafari等が同一ユーザーとして接続されていない
- 母数が小さいため偶然0になった
- ブラウザ群によってユーザーの行動傾向が違う
言えないこと
- アプリ内ブラウザでは再訪を計測できない
- WebViewがSNS経由CV 0件の主因である
この線引きを残すことが、今回一番大事でした。
UTMを付ければ解決する?
UTMは非常に有効です。
SNSリンクへUTMを付ければ、そのセッションがInstagramから来たことを判別しやすくなります。
でもUTMは、後日Safariで戻った人を自動的に同一人物へ戻してくれる仕組みではありません。
UTMは流入元を識別するもの。ユーザー識別とは別。
ここを混同すると、「UTMを付けたのに再訪が追えない」という話になります。
計測限界を、SNSの言い訳にしない
計測できていない可能性がある。
この言葉は便利です。
便利すぎるので注意が必要です。
CVが出ない。
でもブラウザ分断で見えていないだけかもしれない。
再訪が少ない。
でも本当は別デバイスで戻っているはず。
こう言い続ければ、どんな施策も失敗しません。
それでは分析ではありません。
私は、
観測できた数字はそのまま受け止める。計測上の限界は、追加の不確実性として扱う。
ようにしています。
今回なら、WebView側の再訪は0。
同時に、0の理由は特定できていない。
この2つを両立させます。
次にやるなら何をするか
この仮説をもう少し確かめるなら、期間を延ばして母数を増やす。
UTMを安定運用する。
ブラウザ分類を継続する。
SNS接触後の指名検索・再訪を定点観測する。
可能なら、ログイン等のUser-IDを使える環境ではクロスデバイス識別も検討する。
つまり、一度の分析で結論を出すのではなく、次に何を計測すれば仮説を少し絞れるかを決めます。
「分からない」を残すのも分析
データ分析をしていると、何か結論を書かなければいけない気持ちになります。
でも今回のように、原因候補は見えたけれど、特定まではできないこともあります。
そのとき、
「アプリ内ブラウザが原因です」
ときれいに締めるより、
「影響している可能性はある。ただし、この母数では断定できない」
と残す方が、次の判断には役立ちます。
分からない範囲を明確にすることも、分析の成果です。
今回の32人・0再訪という小さな数字は、そのことを改めて教えてくれました。
関連する知見
結果を断定するのではなく、次に何を測れば仮説を絞れるかまで設計します。
