「ホームページはある。でも、誰が担当しているのかと言われるとよく分からない」
中小企業のWebサイトでは、意外と珍しくない状態です。
制作した当時の担当者が異動していたり、総務や営業が何となく兼任していたり、更新が必要なときだけ制作会社へ連絡していたり。
普段はそれでも大きな問題になりません。
ところが、
「Webから問い合わせを増やしたい」
「採用にもっとWebを活用したい」
「SNSも始めたい」
「アクセス解析もした方がいいらしい」
となった途端に、
「で、誰がやるの?」
という話になります。
そこでWeb担当者を採用しよう、外注しよう、と考えることになるのですが、その前に一度整理しておきたいことがあります。
必要なのは「Web担当者」という肩書きの人なのか。それとも、Webに関する役割を整理することなのか。
この二つは、似ているようで少し違います。
Webサイトは作った後にも仕事がある
ホームページは、公開したら終わりではありません。
会社の状況が変われば、掲載する情報も変わります。
新しいサービスが始まればページを追加するかもしれませんし、採用を強化するなら採用情報を見直す必要があります。
問い合わせが増えないのであれば、アクセス状況やユーザーの動きを確認して、改善することもあります。
細かく見れば、
・お知らせを更新する
・サービス内容を書き換える
・実績を追加する
・写真を差し替える
・問い合わせフォームを確認する
・アクセス状況を見る
・検索流入を確認する
・ページを改善する
・制作会社とやり取りする
など、公開後にもいろいろな仕事があります。
問題は、こうした仕事の担当が決まっていないことです。
誰の仕事とも決まっていなければ、当然ながら日々の本業が優先されます。
気づけば、最後のお知らせは1年前。サービス内容も少し古い。アクセス解析も入っているらしいけれど、誰も見ていない。
これは「担当者の意識が低い」というより、そもそもWebサイトをどう運用するか決めていなかったというケースの方が多いように思います。
「Web担当者」に求めている仕事を、一度分解してみる
Web担当者が必要だと考えたとき、一度その人に何をやってほしいのかを書き出してみてください。
たとえば、
・社内から情報を集める
・Webサイトを更新する
・原稿を書く
・写真を用意する
・制作会社へ修正を依頼する
・GA4でアクセスを見る
・Search Consoleで検索状況を見る
・SEOを考える
・SNSを運用する
・広告を管理する
・問い合わせ状況を確認する
・数字をもとに改善案を考える
会社によっては、ここにデザインや動画制作、コーディングまで入ってくるかもしれません。
こうして並べると、かなり幅があります。
社内調整が得意な人と、Webサイトを制作できる人と、データを分析できる人と、広告を運用できる人。
全部同じ人である必要はありません。
むしろ、一人ですべてを高いレベルでこなせる人を探そうとすると、採用の難易度はかなり上がります。
「Web担当者が必要」とひとまとめにするよりも、自社ではどの役割が足りていないのかを先に考えた方が、必要な体制が見えやすくなります。
Webの仕事を「判断」「実行」「専門領域」に分ける
私は、Web運用の体制を考えるときに、大きく3つに分けて考えています。
判断する
まずは「何をするか」を決める仕事です。
たとえば、
「今年は採用を強化する」
「このサービスの問い合わせを増やしたい」
「今月はこのページを優先して改善する」
といった判断です。
この判断には、会社の事業や顧客、営業現場の状況などが関係します。
外部の専門家から提案を受けることはできますが、最終的に何を優先するかは社内で決める必要があります。
実行する
決まったことを動かす仕事です。
原稿を用意する。写真を集める。Webサイトを更新する。制作会社へ修正を依頼する。SNSへ投稿する。
このあたりは、社内でやることもできますし、外部へお願いすることもできます。
会社によって分担が変わる部分です。
専門領域を担う
Webには、ある程度専門的な知識が必要な仕事もあります。
アクセス解析、SEO、広告運用、計測設計、デザイン、システム開発などです。
もちろん、社内に専門人材がいれば自社で対応できます。
ただ、すべての専門領域を一人の担当者に覚えてもらう必要があるかというと、そうとも限りません。
必要な領域だけ外部の専門家に入ってもらうという方法もあります。
専任担当者を採用する場合
Webに継続的に力を入れるのであれば、専任担当者を置くメリットは大きいです。
社内にいるので情報を集めやすく、各部署との調整もしやすい。自社の顧客や商品についての理解も深められます。
施策を継続的に動かせることも大きな利点です。
一方で、「Web担当者を一人採用すれば、Webに関することをすべて任せられる」と考えるのは少し危険です。
Web制作、SEO、広告、アクセス解析、SNSなど、それぞれ別の専門領域があります。
専任担当者を置いたとしても、必要に応じて制作会社や広告代理店、外部の専門家と組む形は十分考えられます。
社内担当者がすべてを制作する必要はなく、社内と外部をつなぐ役割を担うだけでも意味があります。
既存の社員が兼任する場合
中小企業では、この形が一番現実的なケースも多いと思います。
広報、営業、総務、経営企画などの担当者が、Webも兼任する形です。
兼任だからダメということではありません。
むしろ、自社のことをよく知っているので、社内から情報を集めたり、優先順位を判断したり、外部との窓口になったりする役割には向いています。
問題になりやすいのは、担当範囲を決めないまま、
「Webのことは全部よろしく」
となってしまうことです。
本業を抱えながら、サイト更新もSEOもSNSもアクセス解析も、となれば回らなくなるのは自然です。
兼任するのであれば、
「社内情報を集めて判断するところまで担当する」
「更新作業は制作会社にお願いする」
「解析や改善提案は外部にお願いする」
といった具合に、担当範囲を決めておく方が現実的です。
外部へ任せる場合
制作や解析、SEOなどを外部へ任せる方法もあります。
専門人材を一から採用する必要がなく、必要な領域だけ依頼できるのがメリットです。
ただし、Web運用を外注したからといって、社内側の仕事が完全になくなるわけではありません。
外部の人間には、
「営業現場で最近どんな相談が増えているのか」
「会社として今後どの商品を伸ばしたいのか」
「採用でどんな人を求めているのか」
「既存のお客さまからどんな質問を受けているのか」
といったことまでは分かりません。
外部から数字を見て提案することはできます。
ただ、その提案が事業として正しいかどうかを判断するには、社内の情報が必要です。
外注は、判断そのものを手放すことではありません。
ここを混同すると、「外注しているのにWebがうまくいかない」という状態になりやすくなります。
社内に一人、Webの専門家を置かなくてもいい
ここまで考えると、Web担当者不在の解決策は必ずしも「専門家を一人採用すること」ではないことが分かります。
たとえば、
社内の担当者が事業上の優先順位を整理する。
制作会社がWebサイトを制作・更新する。
必要に応じて解析やSEOの専門家が入る。
こうした体制でもWeb運用はできます。
逆に、どれだけ優秀な外部パートナーがいても、社内で誰も判断しなければ施策は進みません。
その意味では、社内に必要なのは「Webのことなら何でもできる人」というより、Webを会社の仕事として扱い、必要な判断ができる人なのかもしれません。
専門知識は、必要に応じて外から補うことができます。
まず確認したいのは「誰が、何を、どこまでやるか」
Web担当者がいないことに困っているのであれば、採用や外注を決める前に、まず現在の仕事を書き出してみることをおすすめします。
たとえば、こんな項目です。
・ドメインやサーバーを管理する
・Webサイトを更新する
・社内から情報を集める
・原稿や写真を用意する
・アクセス状況を確認する
・改善するページを決める
・制作会社へ依頼する
・SEOを進める
・SNSを運用する
・広告を運用する
そして、それぞれについて、
「社内でやる」
「外部にお願いする」
「今はやらない」
に分けてみます。
おそらく、すべてを社内でやる必要も、すべてを外部へ任せる必要もないはずです。
その会社に必要なWeb運用の形は、事業規模や目的、社内の人員によって変わります。
Web担当者がいないことより、役割が決まっていないことの方が問題
Web担当者がいない会社でも、Webサイトを運用することはできます。
専任担当者を採用する方法もありますし、既存社員が窓口になって外部の専門家と組む方法もあります。
大切なのは、「Web担当者を置くかどうか」から考え始めないことです。
先に、
誰が判断するのか。
誰が実際に動かすのか。
どこに専門知識が必要なのか。
を整理してみる。
そうすると、自社に必要なのが専任担当者なのか、兼任担当者なのか、外部のパートナーなのかが見えてきます。
Web担当者という「人」を探す前に、Web運用に必要な「役割」を整理する。
担当者不在の会社では、そこから始める方が遠回りをせずに済むはずです。
次の記事では、ここで何度か使った「Web運用」という言葉について、Webサイトの「保守」「更新」と何が違うのかを整理します。
